☆ こどもセルフプロジェクト(当院版) ☆
様々なこどもの社会問題があります。いじめ、引きこもり、虐待、自殺、そして少子化。こどもの社会問題はそのまま大人社会に引き継がれていきます。
こどもが育っていく過程で様々なおとな、こどもと接していきます。自分自身、というものがわからないまま大人の事情、こども社会に巻き込まれ、自分自身がわからないまま、そして間違って本人に認識されるうちに『相対的』な自分が出来上がります。周りがないと存在しない自分です。
ひとの幸せは、自分が自分として全うできること、そう思います。そのためには、こどもの頃に『自分(セルフ)』を意識した育ち方、育て方、見守り方をしていくことが必要です。相対的でなく、絶対的な、世界に一つだけの、自分です。
自分が確立していれば、自ずから関わる相手も自分を持っている、と尊重できるはずです。
皆が本来備わっている自分らしさを持つことができれば、様々な社会問題は減少すると思います。当院は、こどもが自分自身(セルフ)を持つことができるように皆が考えて行動する事、それを『こどもセルフプロジェクト』として提唱します。
大きな目標の柱があります。
おとなの意識改革が必要です。こどもとおとなは対等、という意識が前提です。こどもはできることは少ないけれど、こどもセルフはおとなと対等です。おとながこどもと同じ目線に立って話すだけでは足りません。
まずは、小児科医も含め大人がこどもとどう接するかを考える必要があります。
兎角、大人はこどもに『命じる』をしてしまいます。しかし、大人のしていることが正しいとは限りませんし、こどもにとっては大人のしていることや社会はおかしいことだらけです。大人は今の社会に長くいるために『慣れている』だけです。
なぜ大人のしていることは正しいとされているか、根拠が必要です。根拠は科学や疫学であり、歴史でもあり、文化でもあります。欲を筆頭とした自己中心的なおとなの事情、は避けることが必要です。こどもに説明できない場合は、大人の見方が間違っている可能性があります。
今の時代をこどもと共に生きている、という感覚を育てていく必要があります。こどもたちに未来を作り出してもらう、そのための素地を我々大人は担っています。
具体的にこどもへの接し方を考えてみます。
1.赤ちゃんを含めたこどもがどう生きていきたいか、を知る、考える。
ものごごろがつく頃にはこどもの積極的な思いを聞くだけでなく、嫌なこと、怠けたいこと、いたずらや人を貶めたい気持ちも聞き、それを認めた上で、なぜか、を聞くことにより、こどもセルフを知ることができる。
2.こどもがどう生きていくのが一番よいのかを客観的に知り、教える。親の欲目は極力抑える。
3.社会のなかで大人との関係はどうあるべきか、を話し合う。
4.こどもにお金、社会のしがらみ、人間関係の齟齬などを正直に伝える。解決できないことがあっても、今は仕方ないかもしれない、と伝え、こどもの考えは違う、と言わない。そして、今後こどもたちが自分たちで作る未来をどうすべきか、こどもたちにゆだねる。
こどもたちに願う柱の1本目です。
これに関し、大人ができることを考えてみます。
・こどもにきちんとした情報をわかり易く提供し、こどもが決めることを待つ。
→答えが出ない場合は一緒に考え、答えを出す。
・こどもが決めたことを実行し、結果を公平な目で考察し、次回につなげる。
→判断が正解と思われる場合、正解を導けたことをおおいにほめる。
→判断が失敗と思われる場合、失敗を理解できたことや決められたことをほめる。
・こどもの発言はことばとして理解し、状況で判断して意見を言わない。
→他人との関係性を以て明らかに間違いの場合、理由も含めて説明する。
・他人を思いやる気持ち、マナーを逐次伝えていく。
こどもに考えさせるにあたって大事なことがあります。常識や大人の考えを押し付けないことです。
・常識はおとなの事情である可能性がある。ひとが生きるに際して必要なマナー、風習はより強く教えていく(挨拶、慣習、嘘はつかない、間違ったことは謝る、他人にやさしく、など)。
・社会の中で隠されたことがらも、共感を持って伝えていく。
・理想論を交えながら現実論を条件提示する。こどもたちが現実を変える可能性があることは伝える。
こどもたちに願う柱の2本目です。
2. 自分の能力を理解し、最大限発揮すること。
年齢を重ねるにつれ得意、不得意分野や、やりたいこと、やりたくないことが周りにも見えてきます。目に見えて秀でている場合はうまく軌道にのる可能性が高いですが、隠れた適正もあり得ます。また、目に見える能力でない場合(協調能力、まじめさ、努力できる力など)は評価されない可能性もあります。大事なことは、
大人が評価するのではない。こども同志が評価しあうこと。
です。こどもがしあわせになるためには、居場所がある、ことが必須です。居場所とはすなわち、適材適所の適所、です。その評価に大人の眼は必要と思います。大人は自分がこどもにやってほしいことをやらせる、のでなく、こどもがしあわせになる手助けをする、必要があります。
これに関し、大人ができることを考えてみます。
・こどもの能力を客観的に見極めること。
・こどもの適性を客観的に見極めること。
・能力、適性を見極めるために日々のささいな表情を見逃さないこと。
・こどものやりたくないこと、苦手なことへのアプローチを考えること。
・こどものやりたいこと、得意なことへ最大限に支援すること。
・ものごころが付いたらこども自身が自分の適性を知ること。
・こどもの『努力できる力』を見極め、伸ばすように配慮すること。
・こどもの『できない理由』を認めること。
こどもたちに願う柱の3本目です。
3. 他人を尊重し、思いやりを持つこと。
強く社会性を持つ人にとって最大のポイントです。1と2があれば自分として強く生きていくことは可能です。ただ、ひととしてのしあわせの最大項目は、他人と一緒にしあわせを築いていく、ことと思います。科学的根拠は出せませんが、ひととひとが出会い、こどもが生まれつないでいく、ことが遺伝子に刻まれている事実がその証明と思います。
これに関し、大人ができることを考えてみます。
・社会では常に自分以外存在することを理解し、思いやりの心を持ち、楽しむことをおとなが実践する。(こどもはおとなの真似をします。)
・こどもだけでものごとを考えさせ、実践させる小社会を認める。(おとなの社会が正しとは限らない)
・こどもに過度な保護をせず、こどもやこども同志で失敗したことを考えさせる。(こどもはおとなの所有物、管理物ではない)
・こども社会の見守りとして、すべてのこどもの意見を聞く。(すべてのこどもは対等である)
・こどもが自分のセルフを自覚し、社会の中で自信を持てるようにする。そして他人が相手のセルフを見ることができるようにする。(おとながこどもの交流が一方通行にならないように交通整理する)
・互いに自分の都合、相手の都合を明らかにし、話し合うように導く。
(続く)次は社会でどう実践していくかを考えていきます。(R1/5/16追加)
少し社会実践的にしてみました。
1.自分で考え、自分で決めること。ものごごろがついたら自分で責任を取ること。の体現。
@筋の通った大人の存在を示す(憧れ、見本)。
社会において本質的なルール、マナーを自然に学ぶ。
親がなれればよりよいが、学校、近所の大人等でもよい。
A自分で考え、自分で決め、責任を取ること、を教える。
基本的な日常が現場。大人が考え、答えを決める、大人が責任を取る、をしない。(あくまでも危険のない範囲)誰かに頼る、ことも大事な時はあるが、誰かに頼らない、ことも必要。
大人の時間の許す限り、こどもを待つ、失敗させてみる姿勢を持つ。
習い事、教育のレールとは違い、親が実践する必要がある。
B自分でできそうもないことを成し遂げる。
問題行動を含め、自然ではできないだろうことを目標に掲げる。
行動分析を行い、1年程度の時間をかけていつの間にか達成できるよう指導する。
(勉強を頑張る、等漠然としたものでなく、ニンジンを食べる、片付けをする、挨拶ができる、ごめんなさいを言う、など具体的なもので結構困難を伴うものがよい。)
的確な評価、目標に向かった方向修正が必要。
Aの家庭での実践は困難だが、最低ラインを親に伝える。(1日1回は待つ、など)
学校と家庭の共同でBを実践したい。
小3くらいで@ABがどの程度できているか評価するのが望ましい。
2. 他人を尊重し、思いやりを持つこと。の体現。
就学前にひととして基本的な、他人を尊重し、思いやりを持つことを習得する。
園での教育理念目標として徹底したい。
家庭での教育は相反するケースもある。分野によって分ける必要はある。
(学問、勝ち負けのある運動など)
就学すると先生の役割は学問が中心になり、他人との関係はこどもどうしに任せるか、問題発生時の解決志向型か、良識を教えがちな道徳教育になる。
日常的な些細なこどもの傷つきは見逃され、蓄積していく。逆に安易な傷つけを黙認し、蓄積していく。→傷つき、傷つけを感じ、修正できるように教えていきたい。
何か相手にしてしまった場合、自分が、ではなく、相手がどう思うかを実感したい。
→言い訳はひととして恥ずべき事、と教えたい。本当の事を言っても怒られない状況が望ましい。
相手に何かをされても、自分の気持ちを言えるようにしたい。本当のことを言っても、相手にさらに何かをされることのない状況が望ましい。
日常的に本当の気持ちを言えることに慣れる必要がある。
弱い立場のこどもが言うことは難しい。→代弁する方法も必要。
本当のこと、本当の気持ちを学ぶ必要がある。→ヨシタケシンスケさんの手法が参考になる。
短時間でもよいので、ひとの弱い面、逃げたい面にも踏み込んだこども主体の教育はできないか?
本当のことがお互いに言えるようになる。→相手の思っていることを自分に入れる、待つ、習慣を身に着ける。→自分の位置も徐々に見極めるとともに相手の個性を認められるようになる。
相手のことは、先入観でなく、理解をする必要がある。
問題行動に関してはしっかりとした介入が必要である。その本人にとっても、問題行動をとることはしあわせではない。
大人の、問題行動を見るのではなく、こどもの将来を見据えた毅然とした対応が必要。
3. 自分の能力を理解し、最大限発揮すること。の体現。
ネウボラを軸とした家庭養育環境で育っていくと徐々に個性が出てくる。
就園してこども社会に入っていくと、人間関係を含め得意不得意が見えてくる。
5歳児健診等でこどもの身体、認知、社会的能力をおおまかに把握する。
こどもの望む意識、得意不得意の意識を踏まえて方向性を考えていく。
将来のしあわせに役立ちそうな分野、今楽しい分野を伸ばしていく。
小学校に入って習い事も増えていくと、さらに得意不得意分野が見えてくる。
学校生活の中で役割、責任を与えられ、またこども関係の中での役割も出てくる。
こどもの認知能力が高まっていくと、自分自身の認識が徐々にはじまる。
1-A、Bにより自己が育っていくと、社会の中の自己を認識できるようになる。
1-@により、自分がなりたい将来を認識し、2により自分にあう将来を認識していく。
こどもの諸能力に関する客観的な情報をこども自身に与え、希望とともに限界を伝えていく。
こどもが自分で自分のしあわせのための社会的位置を見つけ、能力を最大限発揮する。