新型コロナワクチン5-11歳接種、今の本音のところ☆R4/2/9

 

新型コロナワクチン5-11歳接種、悩ましいですね。小児科医の間でははっきり言って評判がよくありません。お勧めはしないが頼まれたら接種する、という話をよく聞きます。

今回はワクチンの分析ではなく、接種家族の気持ちに沿った寄り添い検討をしてみます。あくまでも個人的、偏った視点があるかもしれませんがご容赦お願いします。

 

1.       ワクチン接種の意味があるか?

新型コロナはこどもにとって『かぜ』である、これはおそらく正しいでしょう。ですので従来ならワクチンは必要ない、となるでしょう。ただ、どんなかぜでも重症化のリスクがあります。アレルギーの原因になったり、慢性疾患の原因になったりする可能性もあります。ですので、実はあらゆるかぜにワクチンがないこと自体本来リスクともいえるのかもしれません。

新型コロナではMIS-C(川崎病のような病気)、心筋炎、肺炎、クループなど重症になることがあります。その頻度は低いと思いますが一定数はあります。このリスクを下げられるとしたら、十分ワクチンとして意味があると思います。日常的な『保険』と一緒です。

 

2.       ワクチンは安全か?

これが最大の不安材料でしょう。短期的な副反応は心筋炎を筆頭に懸念はされますが、こども用ワクチンでの頻度は数十万接種に1回と12歳以上用と比較してかなり低いですし軽症です。新型コロナにかかった場合の心臓合併症は数十倍以上でしょう。発熱、だるさ等はありますがこれもあらかじめ知っていれば許容範囲と考えます。

問題は長期的合併症です。数年後に判明する稀な合併症はあり得そうですが、厚労省の説明ではmRNAの1年以上経ってからの副反応は想定されていないとのこと、ある程度の科学的根拠はあるのだろうと思います。また今後新たなワクチンが作成されるとしてもどれも長期的合併症の懸念はあります。

新型コロナに感染した場合、その症状がかぜであったとしても長期的な影響は十分考えられます。新型コロナがもたらす免疫的な侵襲によると思われるLong COVIDと言われるものや、心臓に対する影響なども考えられます。それと比較するとワクチンでは特異的なスパイク蛋白抗原が作られるのみで体への影響は少ないと考えます。ワクチン=100%安全であるべき、と考えると大きな懸念になりますが、新型コロナにワクチンによる防御なく罹った場合の長期的影響との比較からすれば十分安全性はある、と考えてよいと思います。(いずれ誰もが新型コロナに1度は罹ると思っています。)

ただし、ここに不安がある場合は接種しない方がよいと思います。

 

3.       年齢的なこと

色々な場面で被接種者の年齢は十分考慮されます。12歳以上では8割が行っている接種ですから、10歳以上はワクチン量が1/3になることもあり本人の意思があれば十分お勧めできます。57歳はまだ小さいので本人も嫌がるし、何かあったら、ということで接種しないことは十分理解できますし妥当性があります。89歳では本人の意思も出てくるでしょう。ですので大まかに、10歳以上はインフルエンザワクチンと同等程度にお勧めできる、59歳は様子をみてから接種、あるいは接種しないでもよい、迷ったら接種しない方がよい、と思います。

一律に、接種に意味はない、接種は危険が高い、とは考えません。

 

4.       本人のこと

本人の意思はかなり重要です。ただ、社会的風潮から、コロナに罹りたくないから接種したい、や、みんな接種しているからしなくちゃ、や、接種しないと色々な活動ができない、という考えはよくありません。自分を守るため、家族を守るため、という理由が最初に来ない限りはお勧めできません。ワクチンを接種してもしなくても、いずれは新型コロナに罹ります。その罹り方がワクチンの有無で変わってくる、ということです。

また、本人が絶対に嫌、としたり、接種がとても苦手であれば、心理的な負担を考えると接種しない方をお勧めします。

 

5.       親のこと

こどもの接種に親の意思、同意は必要です。こどもだけが接種したい、と言っても親がそれに納得しない限りは、当たり前ですが、接種することはよくありません。12歳未満は親子の絆が絶対的に必要な年齢です。十分話し合ってから臨んでください。親が接種させたいけれどこどもは嫌、というのも同様、こどもは十分説明すれば判断できるはずです。

 

6.       家族のこと

家族に基礎疾患持ちの高齢者や場合によっては5歳未満の兄弟がいる場合もあるでしょう。また、どうしても(ワクチン接種していても)家族に罹って欲しくない、という場合もあるでしょう。オミクロン株ではワクチン2回接種で発症率が半分程度にしかなりませんが、家族(に持ち込まない)のために接種、は十分理由になると考えます。家族は本人と同等と考えるからです。

 

7.       社会的接種のこと

これは全く必要のないことと考えます。現在のオミクロン株、そして今後出てくるだろう変異種は感染性が増す方向にいくはずです。つまり、ワクチン接種しても必ずどこかで罹ると考えます。ワクチン接種をすれば社会の色々な制限が緩和される、というのは大人の世界の話で、こどもにあてはめるべきではありません。社会が現状を恐れず、ある程度の妥協点を見出しながら早急に変わっていく必要があります。こどもたちのために、という視点からすれば、こどもたちの感染対策をさらにさらに強化する、幼児にマスクを励行する、などということがどれほどこどもたちを傷つけているかが分かります。こどもたちは社会が変わるまで、仕方なく我慢しているのです。こどもたちの方が大人よりよっぽど大人です。

社会のためにワクチンを接種する必要はありません。

 

(あくまでも個人的結論)

・社会的接種の必要はない。

・本人を守るためには一定の(十分な)意味がある。

10歳以上は比較的お勧めできる。

・本人が注射がとても嫌ならやめましょう。

・迷ったらやめましょう。

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